バイトが終わり、買い物をしてレジで店長との会話がはずむ。

話は大雪の話題になり、「ここらへんで何メートルもの雪が積もったら大変だね〜」なんて他愛もないことを話しました。

ふと私が
「そういえば、あいちゃん(店長の飼ってる犬のこと)は雪降ったらやっぱ家の中に入れたりするんですか?」
と聞くと、店長は暗い表情を見せて、
「今はもういないんだ・・・」
とそのわけを話始めてくれました。

あいちゃんが店長の家にやってきたのは、二年とちょっと前のことです。
前の飼主は、あいちゃんがとても大きな声でほえるので、声帯をつぶすなどの虐待をし、保護された後に店長の家に来ました。

その後、最初は怯えていたあいちゃんも、散歩に行くなどで徐々に慣れていきました。

しかしながら、その時にすでにあいちゃんの身体のあちこちは虐待で痛んでおり、年齢のこともあり頻繁に病気をするようになったのでした。

そして秋の頃に、あいちゃんはガンにかかりました。
顔面からは膿がでるなど、それはひどい状態だったそうです。

もちろん病院に連れて行きましたが、東京のほうの大きな病院で見せないとどうにもできないと言われたそうです。東京はたいへん遠いので、断念しました。
本当に家族として一緒に住むという感覚でなく、あくまでペットとして飼っているという状況がそういう選択をせざるをえない状況にしたのかもしれません。

その後、あいちゃんのことがこのままでは見ていられないということで、火葬場に連れて行ったそうです。
職員も一見見ただけで、わかるほど病状はひどいものでした。
ここで辛くもお別れをしたそうです。

あいちゃんにとってこれが最良の選択だったのかは分かりません。少なくとも世の中でいう安楽死という選択を、店長家族は選んだのです。

「うん万円で買った血統書付きのペットとか、家族みたいに過ごしてるペットなら東京にも連れていったかもしれませんね」
と、私が言うと
「ん・・。そこらへんはむずかしいね。本当に家族同然だったら、どんな状況でも連れて行くしね。でも、うちでは近くの病院に見せるのが限界だね・・・」
とちょっと複雑な表情でした。

「できれば治療できるとこに連れて行ってあげたかったが、その時間がない。あいちゃんについてはしょうがない」

これも天命だと、私は思うのです。少なくとも、虐待から逃れついた先でのわずかな時間は平穏に過ごせたであろうと思いたい。ご冥福をお祈りいたします。



ちなみに、なぜかこの後ドナー登録についての話題に広がりました。

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